遺 産 分 割

遺産分割とは

複数の相続人が相続した遺産は,遺言がない場合,全て法定相続分に応じて共有されています。
この共有状態は暫定的なもので,遺産分割協議が行われたり,相続人が相続した権利を処分するまでは,相続時に遡って,共有状態を変更することができます。

例えば,配偶者と長男,二男,長女が相続人で,
①土地建物は配偶者と長男が持分各2分の1の割合で相続し(新たな共有),
②預貯金は全部長女,有価証券全部は二男がそれぞれ単独で相続する。
というような遺産分割協議を成立させると,被相続人死亡と同時に,①②のとおりに権利が確定します。

相続人は,遺産分割協議で財産をどのように分けるか自由に決めることができますが,借金を相続する人を決めても,債権者には何の効力もありません。
資力のない相続人だけに借金を割り当てるような分割が認められたら,債権者はたまったものではありません。債権者は,その分割を無視して,各相続人に対し,法定相続分に従った割合で請求することができます。

遺産分割は,                   
 相続人全員で協議して分割する方法       
遺産分割協議の詳細はこちら
遺産分割協議書の詳細はこちら

 調停や審判によって分割する方法 があります。 調停・審判分割の詳細はこちら

また,分割方法は
 現物分割
 換価分割
 代償分割 という方法があります。         分割方法の詳細こちら  

遺産分割協議

遺産分割協議の期限
遺産分割協議には「いつまでにしなければならない」という期限はありませんが,
 ★相続放棄・限定承認は3か月以内
 ★被相続人の準確定申告は4か月以内
 ★相続税の申告は10か月以内
と別の手続きの期限がありますので,早めに分割協議をして,場合によっては相続放棄に方針を変更するという選択肢を残しておいた方がよいケースもあります。
相続人全員が参加
遺産分割協議は相続人全員が協議に参加する必要があり,不参加が1人でもいると成立しません。全員参加といっても,全員が一堂に会する必要はなく,最終的に全員の意思の一致があれば協議は成立します。
例えば,相続人代表(事実上の代表者)が一定の案を提示し,これを電話や手紙で賛否を諮り,最終的に全員が賛成すれば協議は成立します。この方法は,相続人が多数であちこちに散らばっている場合に有用です。

認知症や行方不明者がいる場合
相続人の中に認知症の方がいる場合は,成年後見人を裁判所に選任してもらい,その成年後見人が認知症の相続人の代理人とし遺産分割協議をします。また,行方不明者がいる場合も裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。
なお,不在者財産管理人の選任の申立てをする際に,遺産が乏しい場合や換価が容易な遺産が少ない場合は,裁判所から高額の予納金を求められることがあります。実際に予納金が100万円だったケースもあります。
遺産分割の効果
例えば,ある土地を長男,預貯金を長女がそれぞれ相続するといった遺産分割協議が成立した場合,土地や預貯金は,被相続人の死亡と同時に長男や長女が相続したことになります。つまり,分割の効果は相続の開始時に遡ります。
遺産分割と登記
遺産分割協議が成立すると,自分が相続するとされた不動産の所有権移転登記(相続登記)が単独でできるようになります(他の相続人と一緒にする必要も承諾を得る必要もない)。
この登記申請には相続関係を証明する戸籍類のほかに遺産分割協議書とそれに押印した人の印鑑証明書を添付します(自分の印鑑証明書は不要)。それらの書類は,コピーや相続関係説明図を登記申請書に添付して,法務局から原本を返してもらうことができます。
     

遺産分割協議書

遺産分割協議書の書き方   
遺産分割協議書の書き方に決まりはありませんが,当事務所では次の①~⑤の事項を記載しています。書式は下記のPDFファイルをご参照ください。
ダウンロードしてご自由にお使いください。
①被相続人の特定事項
 氏名,生年月日,死亡年月日,本籍,最後の住所
②相続人の住所氏名,続柄
③協議に参加した者が相続人全員であることを相続人が相互に確認したこと
④遺産の明細
⑤どの遺産を誰が相続するのか     
遺産分割協議に署名押印する方法
遺産分割協議書には,各相続人の自筆で署名してもらい,実印を押印します。もちろん記名(スタンプなど)でも認印の押印でも法律上はよいのですが,法務局や銀行では,そのままでは受け付けてもらえません。手続き上,そして後日の証拠として,全員が署名し実印を押印することをお勧めします。

遺産分割調停・審判

遺産分割調停・審判
遺産分割調停  裁判所のHPはこちら
遺産分割協調停は,相続人間の協議がまとまらない場合に,家庭裁判所で選任された調停委員が間に入って話し合いを進め,遺産を分割する手続きです。
調停の申立ては,相手方(申立人以外の相続人の誰か)の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。調停でも話し合いがつかない場合は,自動的に審判へと移行します。  
遺産分割審判  
遺産分割審判は,当事者の主張や事情を総合的に勘案して,家事審判官(裁判官)が法定相続分に応じて分割方法を定める手続きです。⇒遺産分割の方法へ

遺産分割の方法

遺産分割の方法
現物分割  
自宅は配偶者,預貯金は長男というように遺産をそのまま分けること。
換価分割  
遺産を売却し,その代金で分ける方法。
代償分割  
例えば,遺産全部を長男が相続して家の事業を承継し,その代わりに,長男が他の相続人に現金など自己の財産を交付する方法。