相続登記を放置したままでは,新たな登記ができないので,売却や担保設定ができません。
でも,それ以上に深刻なのは,予想外に相続人が増えてしまうことです。
例えば,祖父名義の土地の相続登記をしていない場合,祖父の子が5人で,その5人の子に各3人の子がいる場合,孫の世代の相続人は単純計算で15人です。そして,その孫の世代が亡くなっていくと相続人は30人を超えるかもしれません。
そうなると,連絡がつかない人,認知症の人,相続権を主張する人,頑なに関わりたくないという人などがいて,まず話し合いなどできません。
その後も次々と相続が連鎖して全く収集がつかなくなり,結局,訴訟で解決を図るしか方法がなくなり,そのための費用(弁護士費用や解決金)は相当高額となります。
不動産を相続した人は,
所有権を取得したことを知ってから3年以内に
相続登記(名義変更)をする義務があります。
正当な理由なく相続登記をしないと10万円の過料を科される場合があります。
ここで言う「知ってから」は実際に知っているかどうかではなく,通常は知っている場合を含みます。
そうでないと無関心な人の「知らなかった」が通用してしまいます。
正当な理由があれば,相続登記をしなくても罰則を受けることはありません。
では正当な理由とは何でしょうか。
正当な理由とは,概ね次のようなものが考えられます。
(1)相続人が極めて多数で相続人の確定に相当時間がかかる場合
(2)相続人間で争いがあり,遺産となる不動産が明らかではない場合
(3)相続登記義務を負う人が重病,経済的困窮で登記できない場合
(4)DVなどで配偶者から避難している場合
いずれも何が違反かは若干微妙です。形式的に上記の正当理由に該当すると自己判断して,相続登記を放置するのは危険です。まずは司法書士,弁護士にご相談ください。
法律上は違反状態でも,直ちに過料10万円が科されるわけではありません。
まず,登記官が長期間相続登記をしていない物件を発見した場合,その相続人に対し,期限を定めて(30日程度)相続登記をするよう促します。
その期限を過ぎても正当な理由なく登記をしない場合,登記官は裁判所に義務違反を通告し,裁判所が10万円の範囲内で過料を科します。
以上のとおり,登記官から,「事前通告」がされるので,10万円の過料は必要以上に恐れる必要はありません。
でも,だからと言って何もしないで先延ばしは危険です。
なるべく早く,相続登記または相続人申告登記をする必要があります。
改正法は,施行前に生じた相続についても適用されます。
施行日(令和6年4月1日)時点で相続登記を3年以上していない人は,施行と同時に罰則(10万円以下の過料)の対象になります。
しかし,これには猶予期間があり,令和9年3月31日までに登記すれば登記義務違反にはなりません。少し時間があると思って先延ばしは禁物です。長期間経過した相続登記は準備に相当時間がかかります。予想外の人が相続人になっている場合もあります。
次のような場合,3年以内に相続登記ができない場合が出てきます。
①兄弟で相続したが話し合いがまとまらない。
②相続人が多数で連絡が取れない人がいる。
このような場合,相続人は,自分が相続人であることを登記官に申し出ることができ,この申出をした相続人は登記義務を履行したものとみなされ,3年以内に登記をしない場合でも罰則は受けません。
この申出があった場合,登記官は職権でその旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができます。これが相続人申告登記です。
なお,この申出は相続登記ではなく,いわば「登記義務の先延ばし」に過ぎないので,その後,遺産分割協議が調った場合は,その時から3年以内に登記しなければなりません。
申出人 法定相続人※全員でする必要はなく,1人でも複数でも申出ができます。
必要書類 登記名義人の死亡後の戸籍謄抄本
登記名義人の住民票除票
または戸籍の附票
※登記上住所が本籍地と同じである場合は不要
申出人の戸籍と住民票
申出書 法務局のウェブサイト等でひな形が公開されています。
記載事項は①登記名義人の氏名と死亡日
②申出人の住所氏名など③不動産の概要 https://www.moj.go.jp/content/001415955.pdf
費 用 無料
相続人申告登記は当事務所でもお受けできます。費用は次のとおりです。
登記の代理 11,000円(1法務局1名)
戸籍等の収集 無料
郵送費約 2,000円
戸籍収集実費約3,000円
合計 約16,000円
※まずは見積もりを(無料)
相続により地方の実家の土地を相続したが,実家に帰る気もないし,管理が大変・・・相続登記の義務化の影響で,そのような人が増えるのではないかと思います。そのようなニーズに応えて新たな制度が令和5年にスタートしています。
相続や遺贈(相続人に対する遺贈)により取得した土地は,次の条件を満たす場合,国に対して,その土地を国庫に帰属させることの承認を求めることができます。※建物は対象ではありません。
①更地(土地上に建物がないこと)であること
②担保や借地権・地上権などの目的となっていないこと
③通路など他人が使用を予定していないこと
④一定基準以上の土壌汚染がないこと
⑤境界が不明ではなく,所有権の存否・範囲に争いがないこと
国は,上記①~⑤の要件を満たし,かつ管理に過分の費用を要するなどの問題が無ければ,承認をします。国が承認をした場合,その土地の通常の管理費10年分を納付することにより,所有権は国庫に帰属します。