司法書士の訴訟代理権

簡易裁判所における訴訟代理

司法書士の訴訟代理権

司法書士は,簡易裁判所において取り扱う民事事件で請求額が140万円以内のものについて,弁護士と同じように代理行為をすることができ,何か法的な問題を抱えた人が簡易で安価な法務サービスを受けることができます。しかし,この司法書士の訴訟代理権には制約・限界があり,司法書士がご依頼を受けることが適当ではない場合があります。

司法書士の訴訟代理権には制約がある

弁護士の訴訟代理権には制約はありませんが,司法書士のそれには大きな制約があります。
例えば,司法書士が請求額140万円以内の案件を受け,簡易裁判所に訴訟を提起したとします。ところが,その案件に以下のような事由があると,簡易裁判所は,職権で事件を地方裁判所へ移送する可能性があります。
 (1)当事者や証人等が多数である
 (2)事実関係が複雑
    (3)争点が複雑
また,不動産に関する訴訟について被告の申立てがある場合には,原則として,訴訟の全部または一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければなりません。
もし,事件が地方裁判所に移送されたり,または簡易裁判所で勝訴しても控訴されて地方裁判所で審理されるようになると,司法書士は,以後,代理人として訴訟行為をすることができなくなります。その結果,依頼人は自分で訴訟を遂行するか弁護士を依頼しなければなりません。

弁護士か?司法書士か?

代理権が簡易裁判における訴訟行為に限られているのが司法書士の代理権の最大の弱点,いわばアキレス腱です。
もちろん,地方裁判所に審理が移っても書面の作成などで支援することはできます。しかし,司法書士に訴訟の代理を依頼するのは,訴訟を自分ですることに不安があるからであり,依頼することにより問題が最終的に決着することを期待したからだと思います。
問題がまだ解決していないのに,途中で「もう代理はできません」と言われるくらいなら,初めから弁護士を頼んだ方が面倒もないし,費用も安かったということにもなりかねません。

だから,司法書士に依頼する事件は,請求額だけでなく,
   (1)移送の可能性が低いこと
   (
2)訴訟が第1審で終結する可能性(和解成立や完全勝訴で相手が戦意喪失)が期待できること
ということも考慮しなければなりません。
私個人は,業務の姿勢として,事件の内容や依頼者の能力を見て,司法書士が代理するのに不安のある案件は,なるべく知り合いの弁護士を紹介しています。